「BiSH」第2章 ~始まりは完璧な5曲から~

「BiSH」第2章 ~始まりは完璧な5曲から~

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1stアルバム発売

画像出典:Brand-new idol SHiT : BiSH | HMV&BOOKS online – DDCZ-2029

 

初ワンマン瞬殺の報から暫くして、いよいよ待ちに待った1stアルバムが発売された。その名も『Brand-new idol SHiT』。グループ名の由来となる『新生クソアイドル』をそのままタイトルにしたまさに名刺代わりの1枚である。

 

私はこのアルバムの「音」と「歌詞」を聴いて、先程の2つの不安が払拭された。

 

 

本アルバムはこんな一節で始まる。

新しい 何かが俺の中で目覚めた
時代が回る

 

作詞はプロデューサーである渡辺淳之介氏(作詞クレジット上は「JxSxK」)。BiSHというプロジェクトの始まりに相応しい彼の心情吐露で幕を開ける

 

なお本フレーズは、ロックバンド・THE YELLOW MONKEYの同名曲『SPARK』をオマージュしたフレーズであり、他にもメロディやアレンジ、<世はあける>というフレーズなどはロックバンド・eastern youth『夜明けの歌』のオマージュであるなど、1曲目から早速ロックファンをニヤリとさせる。

 

 

そして本楽曲はこう締めくくられる。

そう今しか走り出せない
待ってなんかいられない?

 

かくして、BiSHは走り出した。

 

 

そして間髪入れずに松隈ケンタ印のソリッドなギターが印象的な彼女達のアンセム・オブ・アンセム『BiSH-星が瞬く夜に』になだれ込む。感傷に浸っていたリスナーを冒頭のドラム連打で叩き起こす必殺のメロコアチューンは、自己紹介であり決意表明だ

 

 

行かなくちゃ 化物だって 気にすんな
星が瞬く夜に keep my faith あどけない
そりゃね 決定からの速さは異常だし

 

今や清楚・清純・純朴といったテンプレートでは括れないほど多種多様なグループが乱立するアイドル界においても、彼女達の存在は異端だ。

その異端具合は、このPVを見れば理解いただけると思う。そんな自分達を「化物」と形容し、気にしたり気にしなかったりしながら<ギンギン好奇心の目>に晒される彼女達は、まだBiSHになって2ヶ月半程度しか経っていない。<決定からの速さは異常>なのだ。

 

なぜアイドルになりたてホヤホヤの彼女達がこんな目にあわなければならないのか。

 

それは、彼女達がBiSHだからだ

 

あのBiSをもう一度始めるために集められたメンバーだからだ。異端だと、化物だと蔑まれようが、BiSHをまっとうする。それこそが、自分の意思でBiSHになることを決めた彼女達のプライドなのだ

 

そんな想いを抱いての3曲目。「化物(モンスター)」は遂に世間へ激烈爆音バッキバキハードコアサウンドを武器に<飛び出す>

 

 

まるでU2『The Joshua Tree』だ。なんて美しい3曲の流れだろう。

 

『スパーク』でBiSHを始めるまでの“葛藤”とおぼろげな“未来”を歌い、『BiSH-星が瞬く夜に』でその“始まり”と“今”を刻み、『MONSTERS』で溜め込んだエネルギーを“外”へ叫んだ。

曲調もミドルバラードから、メロコア、ヘヴィサウンドと徐々に激しくハードになっていく流れもたまらない。はい名盤確定。

 

続いての『Is this call??』は、サビの開放感が印象的なロックバラード。淡々としながらも少しハネたドラムが、弱い自分と前向きに生きようとする自分がせめぎ合うような、自分の経験をもとに書いたというアイナ・ジ・エンドの詞を後押しする。

ーー「Is this call??」は?

アイナ : 「寂しさを乗り越える」みたいな感じです。おじさんと一緒に仕事をしてるんですけど、しんどくなってきちゃって。その前はアパレルの仕事をしていたのもあって、「なんでこんな汗臭い人たちと働かないといけないんだろう、辛い!」と思って、その時思った事をブワーっと書き出したんです。

出典:これが新生クソアイドルのデビュー作だ!!ーーBiSH、待望の1stアルバムをハイレゾ配信(デジタル・ブックレット付き)

 

そして拳を掲げずにはいられないライブ定番曲『サラバかな』に続く。

BiSHとしては珍しい松隈ケンタ以外の作曲で、ロックバンド・蟲ふるう夜にの慎之介が担当している。蟲ふるう夜にのサウンドプロデュースを松隈ケンタが行っていたため、その縁だろう。決してキャッチーではないが独特な情緒を感じる雄大なメロディだ。

 

 

作詞は竜宮寺育とクレジットされているが、その正体はプロデューサーの渡辺淳之介氏。「V系ですか?」というような難解な単語が並んでいる。

美しい日本語による断片的な感情と個人的な描写を連続させたような詞だが、聴き手に想像の余地を与える素晴らしい詞だと思う。

 

個人的にサビで歌われているのは『スパーク』と同様の感情だと思っている。

散りゆく午後に わずかな光が
醜い跡地に 紅誘うと この手を眺め
散りゆく午後に わずかな光が
汚い景色に 藍の気引かれる
追うとなく添うなく 息吹が芽生え
僕の代わりに均して

 

<わずかな光>=BiSH、<醜い跡地><汚い景色>=BiSが燃やし尽くしたアイドルシーン、そんな風に置き換えて考えるとこの曲に込められた彼の真意が見えてくるのではないか。

 

そして最も彼の想いを感じるのは<僕の代わりに均して>の部分だ。この<均して><鳴らして>に変換するとどうだろう。自分の想いをBiSHに託し、アイドル業界・音楽業界で彼女達に暴れまわって欲しいと願う彼の愛情のようなものも感じないだろうか

 

難解な歌詞が並ぶ中で毛色の違う言葉が浮かび上がるCメロは、闇の中に灯る光のように印象的に聴こえてくる。

途方にくれて歩いていく それには気付かない
夢なら覚めぬのに 幾多後悔の日々
どこまでいこう 終幕へ
どこへ行こうか? サラバかな そりゃないな
まだ中途 だから その手を離さないよう
これからも共に時を縮めよう

 

ライブで共に歌って初めて完成する<その手を離さないよう>は、ファンとのつながりを感じさせる大切なフレーズだ。

そして「楽しい時間は一瞬で過ぎる」という言葉を下地にし、そんな一瞬に感じる時間を過ごしていこうというような<これからも共に時を縮めよう>には、グッと来ざるを得ない。

 

あっという間の5曲だ。個人的には、ここでレコードで言うA面が終わったような印象がある。

 

→ 続き(執筆中)

 

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