最強に押しの強いアイドルがいた
画像出典:BIOGRAPHY – PASSPO☆ – UNIVERSAL MUSIC JAPAN
アイドル戦国時代が一旦の落ち着きをみせてから、もうどれくらい経つのだろう。
あの眩い時代を綺羅星の如く駆け抜けたアイドルグループのひとつにPASSPO☆がいた。
ライブのことを「フライト」、ファンのことを「パッセンジャー」と呼ぶ、キャビンアテンダントをコンセプトにした世界観と、ペンネとアラビアータ機長こと阿久津健太郎氏による独自のロックサウンドにより人気を博したグループだ。
個性あふれるメンバーのはっちゃけ具合と不遜な態度、謎の存在感はどこかBerryz工房を彷彿とさせるところがあった。
そんな彼女たちのパフォーマンスは生バンドで披露されることもあり、スラッシュメタルバンド・UNITEDの横山明裕や元SEX MACHINEGUNSのHIMAWARIなど、そっち方面の方々によるバキバキにラウドの演奏が繰り広げられた。
一方で振り付けは、竹中夏海によるキュートでしなやかで艶やかな、しっかりと“アイドルしている”ものになっている。キャリーバッグや扇子など小道具を使ったものもあり、オリジナリティたっぷりだ。
この「ロック」と「アイドル」のバランスが完璧に調和し、唯一無二のPASSPO☆ワールドを作り上げていた。
ここでは、そんなPASSPO☆楽曲を紹介する。
マテリアルGirl
まさにポップパンク、まさにメロコア。
キッズの心をわしづかみにするあの青春サウンドがアイドルと融合することで、キュートさも兼ね備えた最高に瑞々しい楽曲へと進化を遂げた。
シンプルなだけで終わらないユーモラスなギターフレーズが、本楽曲のキャッチーさとアイドル感を作り出している。また同じ歌詞を繰り返すサビも“音を抜くパート”を組み込むことで3分半の楽曲の中にも展開を持たせている。
ライブの起爆剤となった1曲であり、合いの手を入れる箇所や真似したくなる振り付けが随所に織り込まれている。特にサビの振り付けでは「上!前!開いて!」とメンバー先導のもと会場全員で踊る。あぁ懐かしい。。
まさに『マテリアルGirl』を象徴するフレーズである<きっとあたしを輝かせてくれる モノはこの世界中に いくらでもある>というポジティブなバイブスは、“未完成”が一種の売りであるアイドルという存在が歌うことで一際輝くのだ。
ViVi夏
この曲がなければPASSPP☆の夏は始まらない。
PASSPO☆流の王道アイドルソング『ViVi夏』は、水着MVという映像面でもアイドルの王道を行きながらも、それだけで終わらない深みを持った楽曲だ。
その理由は歌詞にある。
「やさしい」って言葉 感じる瞬間
ほんの少しだけれど 大人になれたよ
「ありがとう」って意味 なんとなくわかったら
子供じゃなくなった気がしたんだ
そう思った この夏
こんな哲学的な詞から始まるアイドルの夏ソングがあっただろうか。
“君”への思いを秘める王道のアイドルラブソングだが、冒頭にこの歌詞が差し込まれるだけで、主人公の年齢・性格・君への感情などなど様々な事柄に思いを馳せることができる。
そして自分自身も改めて、「優しさ」や「感謝」ということについて立ち止まり考えてしまう。そんな歌詞だ。
流れるようなフレージングが気持ちいいリフは、まさに“夏”を具現化したようなサウンドだ。全体を通し、ハードになり過ぎず、それでいてしっかりとロックしているサウンドメイクは絶妙。
Aメロも1番と2番でバッキングを変えていて、聴き手を飽きさせず新鮮な驚きを与えてくれる。好き。
また夏の明るさや楽しさではなく、夏の切なさや郷愁を誘うようなサビのメロディは絶妙で、他のアイドル夏ソングとは一線を画する“泣き”の要素をはらんでいる。好き。
さぁ、ラストの<抜ける空 ViVi夏でRock!>からリフになだれ込む瞬間のカタルシスで絶頂を迎えよう。
Love Diary
ソリッドなギターが印象的な本楽曲『Love Diary』は、その楽曲構成が絶妙だ。
なんとイントロから1サビが終わるまで、わずか1分間。その間にしっかりとリフ、Aメロ、Bメロ、サビ1、サビ2と楽曲が展開していくのだ。
そしてそのどれもがキャッチーでカッコいいだけでなく、譜割りや歌詞、歌唱時のアクセントの付け方によって“歌いたくなる”歌・メロディになっているのが凄い。ペンネとアラビアータ機長のメロディメーカーとしての才能に脱帽するしかない。
きっと本楽曲を思い出す際にイメージするパートは、人によってサビだったり、イントロだったり、リフだったりと様々になるはずだ。それだけ全編にわたってキャッチーなフレーズの応酬なのだ。
歌詞は“日記に話しかける女の子の視点”で描かれている。コンパクトにまとめられている楽曲ながら、少ない描写の中だけでも主人公の可愛さが溢れ出している。<“事件は現場で起きてる”そうゆうこと?…>とかバカっぽくて大好きだ。
3分少々の楽曲にもしっかりと入れてくれている超ハードロックなギターソロも必聴。
WING
世界一周ロックの旅“ぱすぽ☆エアライン3部作”ということで、世界のロックジャンルをPASSPO☆流に表現した企画のラストを飾ったのが本楽曲だ。
PASSPO☆(当時の表記は「ぱすぽ☆」)meets ジャーマンメタルということだが、ゴリッゴリのジャーマンメタルという訳ではなく、なんちゃってジャーマンメタルって感じだ。
とはいえ、疾走感のあるメロディアスな曲調やクラシカルなフレージング、ツーバスも差し込まれちゃうところなんかはしっかりとメタルしている。
やはり本楽曲の一番の聴きどころは、サビの開放感だろう。一気に景色が開けて風が吹き抜けるような魔法は、コードによるものか、ユニゾン歌唱によるものか。
また1番と2番で歌い出しが、同じ譜割りに<So get now>と<あたし>で英語と日本語になっているところも面白い。
英語のほうがカッコよく聴こえそうだが、個人的には<あたし>の方がカッコよく聴こえる。そんなところも楽しい楽曲だ。
欲を言えばジャーマンメタルを標榜するなら、長尺のギターソロも欲しかったなぁ…。
WANTED!!
アイドル名イントロ100選でもあったら確実にランクインする珠玉のギターフレーズ。
ドラム、フレーズ、バッキングで溜めて溜めて溜めて溜めてからの森詩織さんの高らかな<It’s you!!>、そして銅鑼バコ~ン!でリフへなだれ込み絶頂へ…。中華エッセンスの入ったダサかっこいいリフは癖になって耳から離れない。
「うりゃおい!」しやすい4つ打ちビートに振りコピするために作られた振り付け、全員で叫ぶ<WANTED!!>。そこかしこにライブで盛り上がるための要素が詰め込まれたPASSPO☆随一のライブアンセムは、いつでもフロアを熱狂の渦に巻き込んだ。
そんな中でも作者の技が光るのがBメロ。1番では<Something, Somewhere なんとなくで>、2番では<Oneday, SUBWAY 待ち合わせ>と巧みに韻を踏みながら限られた音に歌詞をはめて、歌いたくなる気持ちのいいグルーヴを作り出している。
そしてドルヲタが湧きちらかすセリフパートまで組み込まれてはもう観念するしかない。あいぽん好きだよあいぽん。あぁまたいつか<逃したくないの>をみんなで叫びたいよ。
終わりに
久々にPASSPO☆を全曲聴き返してみたが、やっぱり名曲ぞろいのいいグループだったよなーと思った。
とこんなブログを書いていたら、なんと元メンバー・槙田紗子ちゃんの結婚のニュースがタイムリーに飛び込んできた。いやはや、めでたいめでたい。
解散ライブのラストで歌われた、<今夜は 飲もうよ!>なんて歌詞が飛び出すPASSPO☆にしか歌えないこの曲も結婚式の余興なんかで歌われるのかな。
ほんとに<最強メンツ>だったな~。
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