ハロヲタを安心させた新曲投下
前作から約5ヶ月ぶり、カントリー・ガールズ待望の新曲が届きました。
とりあえず、まだ活動することに安堵…。
というのも本グループ、いうなれば“ほったらかし”状態となっていたからです。
メンバーの梁川奈々美さんが2019年3月11日に卒業し、現在4人体制となったカントリー・ガールズ。うち3人が別のグループと兼任し、それぞれのグループでの活動の方が目立っていたことから、まことしやかに“解散”の噂が囁かれていました。
そんな中での新曲発表。
「まだ活動が続くんだ!」という喜びとともに、「オールディーズの息吹を現代的アイドルソングに吹き込む稀有な存在をなくしてはいけない」と改めて思わせてくれる名曲が届けられました。
舞台はある夏の日。
描いたのは、近年のハロプロ功労者の一人・星部ショウさんです。
星部ショウさんといえば、こぶしファクトリー『念には念』やBEYOOOOONDS『眼鏡の男の子』といったコミカルな楽曲から、つばきファクトリー『I Need You ~夜空の観覧車~』やアンジュルム『赤いイヤホン』など、キュートな楽曲、クールな楽曲まで、多彩な楽曲を作れる万能型。
しかし、それぞれの楽曲にしっかりとフックがあり、キャッチーさを忘れない今のハロプロに欠かせない作家さんです。
花火の上がらない夏の夜
タイトルは『One Summer Night ~真夏の決心~』。
タイトル通り、ある夏の夜のお話です。
唐揚げにレモンが付くように、こたつにみかんがあるように、そしてハロコンにまことがいるように、J-POPにおいて「夏の夜」には「花火」が付き物です。
君がいた夏は遠い夢の中で空に消えていったり、夏の星座にぶら下がって上から見下ろしたりと、夏の夜と花火のセットには枚挙に暇がありません。
しかし、本楽曲では「花火」は出てきません。
花火はおろか、夏らしいワードすら出てきていません。
なのにどこか“夏らしさ”を感じてしまうのは、やはり本楽曲一番の特徴であるブラスの音色のせいでしょうか。
部活をやっていた方なら経験があるかと思いますが、放課後の学校って吹奏楽部の練習の音めちゃくちゃ聞こえてきますよね。また夏の風物詩・甲子園でも、応援歌として吹奏楽の迫力ある演奏は鮮烈な印象を与えます。
日本人の深層心理には、「ブラスの音色=夏」というイメージが刷り込まれているのかもしれません。
ハロプロといえば「ファンク」なので、ブラス自体はしょっちゅう楽曲の中に登場しますが、本楽曲のように曲に寄り添うような使われ方は、珍しいのではないでしょうか。
80’sの香り漂う歌詞&アレンジ
カントリーミュージックはもちろん、ロカビリーやモータウンなど古き良き音楽を現代風にアップデートして、アイドルソングとしてラッピングすることでカントリー・ガールズの楽曲は完成します。
本楽曲では、“ムーディーなブラスサウンド”という80年代の特徴的な音像で新しい世界を見せてくれました。
MVがフルで公開されました!
80’sを感じさせるディープな残響感と、カタカナ英語を多用した散文的な歌詞がこだわりの一曲です。
あの夏の日、花火のように輝いた青春の1ページ。
是非ご覧ください♪ https://t.co/w85ftA7JX5— 星部ショウ (@hoshibesho) August 26, 2019
作者の星部さんが上記のようにおっしゃっている通り、歌詞の面でもオールディーズな雰囲気を演出しています。
Aメロ
校舎裏で誰かが奏でるサクソフォン
グラウンドで誰かが放ったホームラン
売店のジュース 食べかけのスナック
ダイエットはまた明日から
<サクソフォン>というフレーズ。「サックス」のことですが、あえて「サクソフォン」と呼ぶことで、カタカナ英語感、つまり昭和感が溢れてきます。
また<校舎裏><グラウンド><売店>と、青春時代を思い出すような郷愁を誘うワードを散りばめることで、おっさん&おばさんの心を容赦なく抉ってきます。死にそう。
一方で、メロディは言葉を詰め込む現代的な譜割り。
このミスマッチ感が、「ただ懐かしいアレンジをしているだけではないんだぞ!」という制作陣の意気込みを感じてすごく好きです。
ミスマッチ感と言えば、下記の部分。
2Aメロ
楽しそうに微笑む彼とのフォトグラフ
一枚ずつ君と眺めてはデリート
<サクソフォン>と同様に、<フォトグラフ>と懐かしい呼び方をしていますが、ここで面白いのはそんなオールディーズ感を演出しておきながら、行っている作業がとても現代的という点です。
ウィキペディア大先生によると、インスタントカメラのパイオニア『写ルンです』の販売開始が1986年とのことなので、当時の写真といえば「フィルム写真」が普通だと思います。
そんな時代のアレンジをしておきながら、本楽曲で行っている作業はおそらく「スマホの画像削除」です。スマホぽちぽちしてるだけです。<デリート>という言い回しからも、それが想像できますね。
まぁ「だからなんだよ」って話ではあるんですが、そこのミスマッチ感が面白いじゃないですか。懐かしいアレンジながら、しっかりと“現代の歌”という感じがしてニヤリとしちゃいます。
夏と青春と思い出と
さて、本楽曲。
彼と別れた主人公が、“ある決心”をして親友を学校の屋上に呼び出し、語り合ったある夏の夜の出来事を綴った歌となっています。
1サビ
One Summer Night
今日初めて 柄にもなく塾をサボった
「バカだな、こんな時期に」君は笑ってた
<塾をサボった>なんてワードを聴いてしまうと、自動的に<たこ焼きとソースと初恋のにおい>が充満してくるハロヲタの皆さん、大好きです。
自転車押しながらゆっくり帰ってたあの2人の続編か?なんて妄想するのも楽しいかもしれませんね。
<「バカだな、こんな時期に」><半年後はここを離れるのマイホームタウン><進路希望を書いた時から>といった歌詞から、高校最後の夏のお話であると推測できますね。
地元を離れ、どこか遠くの大学へ進学するのでしょうか。
彼女の描かれ方を見てみると、未来に向かってメラメラ燃えているというよりは、彼とのお別れもあり、今は感傷モードというか、すでに青春を振り返るようなモードに入っているように感じます。
「青春とは、後になって気づくもの」
な~んてよく言われています。
この主人公にも、これまでの学生生活や受験勉強、部活の練習の日々や試合に負けて泣いた日など、様々な青春の思い出があったことでしょう。
でも、そのどんな思い出たちよりも、今日この日。
塾をサボって親友と魔法の空を見上げたこの夏の夜こそが、一番の青春になるのではないでしょうか。
「ちょっと悪いことをした日」ってなんか記憶に残るじゃないですか。
盗んだバイクで走り出したことはないですが、私自身も、子供だけでは出てはいけない校区外へ友達と遊びに行った小学生時代のあの日や、石を投げて学校の窓を割っちゃった中学生時代のあの日など、少しの罪悪感と大きなワクワクを感じた“あの日”を鮮明に覚えています。
特に彼女は、<いつもお利口で生きてきた><いつも大人を気にしていた>ような真面目な子です。
もうすぐ見れなくなってしまう景色を眺めながら、色々な事を語り合ったのでしょう。
その中では、きっとこれまでの2人の思い出を“青春”として懐かしみ、話していたのだと思います。そんな時間が、一番の“青春”だとは気づかずに。
画像出典:夢じゃない!/山木梨沙 | カントリー・ガールズオフィシャルブログ Powered by Ameba
2Aメロ
青春なんて大げさだけど
笑顔で恋の卒業式
「ぜんぜん<大げさ>なんかじゃないんだぜ」と伝えてあげたいですが、いずれこの子も気づくので今は黙って見守りましょう。
“青春”という短い時間を暗示するかのように使われている<見上げれば一瞬のシューティングスター>という歌詞もニクいですね。
2サビ
One Summer Night
「夢の話、彼には出来なかったんだ」
魔法の空を見上げ 君は聞いていた
月が昇ってた
1サビでは<陽が沈んでいた>でしたが、2サビでは<月が昇っていた>となっており、この2ワードだけで時間の経過を表しています。
時間を忘れて語り合う仲良し2人組、なんとも美しい風景ですね。
そんな2人が見ている風景は、もうすっかり夜です。
夏の日の思い出の景色が「月」ってなんだかグッと来ませんか?
汗を流す部活のシーンでも、海やプールではしゃぐシーンでも、夏祭りの花火でもなく、親友と校舎の屋上で見た月なんて……。
星部先生、一生ついていきます。
と、ここまで書いて、改めて下記ツイートを見て気づきました。
MVがフルで公開されました!
80’sを感じさせるディープな残響感と、カタカナ英語を多用した散文的な歌詞がこだわりの一曲です。
あの夏の日、花火のように輝いた青春の1ページ。
是非ご覧ください♪ https://t.co/w85ftA7JX5— 星部ショウ (@hoshibesho) August 26, 2019
なるほど…。
「花火」なんてワードを使わなくても、この一瞬の夏の夜自体を「花火」に見立てちゃったのか…。
星部先生、やっぱり一生ついていきます。
物語の余白
主人公は彼にも打ち明けることが出来なかった夢を、この日親友に語ります。
でも、なぜこの日だったのか。
どんなキッカケで“真夏の決心”をしたのか。
そこについては、描かれていません。
でも、そこが想像の、いや妄想の余白があって素晴らしいと思います。
楽曲を楽曲以上に楽しめるというか、曲を聞いている時間以外も曲の中に居られるというか、曲を自分のものにできるというか、そこが音楽のいいところですよね。
あぁ、音楽って素晴らしい。
そんなことを思ったアラサーのある日の「One Summer Night」でした。
お後がよろしいようで。ベンベン。
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