テーマは“夢と恋愛”
恋人と別れる歌は数あれど、夢のために恋人と別れた“後悔”を歌う歌って意外と少ないのではないだろうか。私の愛するGLAYでは「軌跡の果て」あたりで触れられてるテーマだ
軌跡の果て
光りを目指す自分のために 何もかも捨てたさ
家族を友を そして恋人さえも…
嘘や欺瞞に目を潰して 手にした真実は
「おまえとの生活ほどの 夢はなかった」
いや~女々しい!男って女々し~い!
はい。そんな“夢と恋愛”というテーマをエビ中が歌ったのが本楽曲「アンコールの恋」だ。この曲が面白いのは、女性目線というところと恋人(になる人)と出会った後に“夢”に出会うところだ。
作詞:真戸原直人/作曲:宅見将典
作詞は、「ツバサ」で有名なロックバンド・アンダーグラフの真戸原直人。エビ中楽曲への参加はこの曲のみだ(Wiki情報)。楽曲制作では特に“歌詞”にこだわりを持っているようで。
ーー真戸原さんの中で「良い音楽」の核とは何ですか?
やっぱり日本で日本語で奏でる音楽なら歌詞ですね。昔から自分で歌詞を書いて歌っていたので、歌詞をちゃんと伝えたいという思いがありました。
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本楽曲でも、少ない文字数ながら本当に深みのある歌詞を紡いでくれている。
作曲は、「手をつなごう」の作曲/編曲も行っている宅見将典。ハロプロやAKB48といったアイドルから、A9やViViDといったV系アーティスト、果てはAAAやEXILEなどのJ-POPスターまで幅広く手がけている。
真戸原さんとは「アンダーグラフ」で何曲も共作を行っており、おなじみタッグでの楽曲提供といったところだ。
カッコ付きの「さよなら」
「さよなら」告げたばかりの夜
ただ明日を信じて
世界が変わること待たず 今 私が変わるの
別れのシーンから始まる。
2行目に強い意志を感じないだろうか。「ドッドッドッドッ」と心臓の鼓動のように鳴らされるキックや細かく刻まれるハイハットが、夢に向かってはやる気持ちを表している様だ。
「運命ならまた結ばれる、、、。」と信じて、未来だけ見つめて夢に向かって歩んでいく主人公。しかし、別れたその日からどれだけの日数が経ったのかは分かりませんが、強い後悔が押し寄せてくる。
もう一回 もう一回 君に会いたくて
甘酸っぱい幸せライムみたい
もう一回 もう一回 一緒に笑いたくて
夢さえ捨てたくなるの アンコールの恋
<夢さえ捨てたくなるの>ってすごい歌詞だと思わないだろうか?
男性ロックバンドでは、後悔しつつも夢に向かっていく歌が多い気がするが、夢を捨てることも考えちゃう感じが女性っぽさ(偏見?)が出ている。まぁ作詞男性だけど。
だって“一度決めたことを変える”ってそんなにカッコいいことではない。男っていうのは、そりゃもうカッコつける生き物なので、死ぬほど後悔しながらも強がって進んでっちゃうものなのだ。う~ん、カッコ悪いな。
しかし、この主人公は夢を捨ててもいいくらい、もう一回会うことを願っている。
もう一回 もう一回 君に触れたくて
子供っぽい 笑顔に戻れたから
もう一回 もう一回 一緒に過ごしたくて
「さよなら」消したくなるの ジレンマの恋
“夢を追いかけたい”でも“恋人とも過ごしたい”、そんな2つの感情の板挟みになりジレンマを抱える主人公。そして、冒頭で告げた「さよなら」を消したい気持ちに襲われる。
歌詞カード上の表記でも、冒頭の「さよなら」、サビの「さよなら」どちらにもカッコが付けられていて、リンクが分かりやすいようにされている。ニクいね。
巻き戻すことができるのなら
出会えたあの瞬間まで
恋のハジマリを感じていたあの頃
夢はまだなかった、、、
泣きのギターソロからのCメロ。個人的に、本パートがこの曲1番のポイントだと思っている。鬼気迫る柏木ひなたさんの<巻き戻すことができるのなら>から、安本彩花さんの力強くも澄んだ歌声で歌い上げられる<出会えたあの瞬間まで>。
無邪気に恋していた主人公だが、その途中で、彼と出会ってから夢を見つけた。それはもう一大事件だったと思う。
夢だからね。
別れのシーンから始まり、出会いのシーンで最高潮のカタルシスを迎えるって素晴らしい構成だ!
「さよなら」の日に戻らない理由
さてここからは、妄想。
巻き戻すことができるのなら
出会えたあの瞬間まで
恋のハジマリを感じていたあの頃
夢はまだなかった、、、
この曲で主人公は、「さよなら」を消したいと願っている。しかし、時間を巻き戻せるのなら<出会えたあの瞬間>に戻りたいと歌っている。
もし、もう一度恋人とやり直したいのであれば、別れを告げたあの日に戻ればいいのになぜだろうか。
これ、2つの解釈があると思っていて。
1つ目は、“恋愛を優先するため”。
彼と出会ったあの瞬間は、歌われている通り、まだ夢と出会ってはいない。そのまま、夢と出会わない人生を送ることができれば、「さよなら」を告げることもなく、恋人と幸せに暮らしていけたかもしれない。だから、この瞬間に戻りたいという解釈。
2つ目は、“夢を優先するため”。
出会った時には、まだ恋のハジマリを感じていた頃。彼と深い関係にはならず、その先に出会うであろう夢のみに没頭する人生を進んでいくこともできるタイミングだ。
なので、夢を優先するためにこの瞬間に戻りたいという解釈。
自然に考えるとやっぱ前者がいいのかな~と思うが、それならやっぱり「さよなら」の日に戻るのが自然だよな~なんて思ったり。でもそれなら彼と出会わない選択をするのになんで“出会った瞬間”なのかな~と思ったり。。。
いずれにせよ、考える余地を残した素敵な歌詞だ。
2種類のアンコール
アンコール
音楽用語。フランス語で「もっと」「もう1度」の意味。音楽家が聴衆の喝采に答えて、同一または異なった楽曲を追加演奏すること。
なるほど。
アンコールって「演者側」と「観客側」の2種類ある。「起こす側」と「貰う側」だ。
この「アンコールの恋」の主人公はどちら側なのか考えてみた。
主人公は「さよなら」を告げることで、自分で恋を終わらせている。つまり、自分でパフォーマンスを終わらせた「演者側」といえるだろう。そう考えると切なさが倍増するのだ。
「観客側」であれば、終わってしまったパフォーマンスに対して、自分たちで声を上げてアンコールを起こせる。でも演者側は、どんなにパフォーマンスがしたくても観客のアンコールの声を待つしかないのだ。
つまり、この主人公も立場的には元恋人を待つしかないのではないだろうか。
我々一般人は、「アンコール」と聞くと“起こすもの”と無意識に解釈してしまう。なので、この「アンコールの恋」も、もう一度恋人に会うために行動を起こしたいと考える主人公の曲と考えてしまう。
でも、エビ中のような演者側の人たちにとって「アンコール」とは“貰うもの”なのだ。
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この曲の主人公は“演者側”。つまり「アンコールの恋」とは、「アンコールの(声を待っている)恋」なのかもしれない。
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