帰ってきたBuono!
Berryz工房から夏焼雅・嗣永桃子、℃-uteから鈴木愛理が選抜され、アニメ「しゅごキャラ！」テーマソングのために結成された期間限定ユニット「Buono!」。
期間限定のはずが、その人気からあれよあれよと言う間にシングル13枚をリリース。武道館で開催された指原莉乃プロデュースイベント『第一回ゆび祭り～アイドル臨時総会～』での他を圧倒するずば抜けたパフォーマンスはアイドルファン界隈で語り草となった。
そんなハロプロが誇るスーパーユニット「Buono!」。
開店休業中だった彼女たちから2016年に4年ぶりの新曲として発表されたのがこの「ソラシド～ねえねえ～」だ。
作詞／作曲 津野米咲
画像出典：作曲ツールという点で見たギターの可能性｜津野米咲 インタビュー【前編】
作詞作曲は、ロックバンド「赤い公園」のリーダーでギター＆ソングライティングを担当する津野米咲さん。本職のバンドは、様々な曲調の曲はあるが言うなればゴリッゴリのロックバンドってやつだ。
一方で津野さんは、ゴリッゴリのハロヲタ。
また、何を隠そう「第15回ハロプロ楽曲大賞」堂々の第1位を獲得し、一般層へもプチバズった名曲「泡沫サタデーナイト」の作詞作曲をしていただいたハロヲタの大恩人である。
楽曲提供を行うアーティストには、「自分の色に染めるタイプ」と「相手の色に合わせるタイプ」があるが、ハロプロに楽曲提供をする場合の彼女は完全に後者。
いや正確に言えば、自分の中から溢れ出る“ハロプロ愛”を歌わせていると考えると前者という方が正しいのかもしれない。はは。
それほどに彼女の楽曲からは、「ハローってこれこれ！」ってな感じのハロプロ感が溢れ出ている。
“普通”の人への応援歌
まずタイトル……。
愛ゆえにあえて言おう。
だっせえええええええ！！！！
語呂悪ぃぃぃいいいいい！！！！
ハロプロっぽいいいいいい！！！！
好きぃぃぃいいいいいいいい！！！！
1番Aメロ
ねえねえ
最近調子はどうだって聞かれても
考え込んじゃうね
ねえねえ
逆にそっちはどうなのよって聞いたら
同じような顔をした
冒頭からドキッとするようなフレーズから始まる。
世の中に「最近どうよ？」って聞かれて自信を持って「最高だよ！」って言える人、どれだけいるのだろうか。爽やかサウンドに乗せて明るく歌われているので聞き流しちゃいそうだが、かなり強烈な問題提起を歌っている。
1番Bメロ
空が晴れたら嬉しくって
花が散ったら悲しくって
人はなんて忙しい 生き物なんだ
では、なんで自分の人生に自信が持てないのかという理由を歌ったのがこのBメロ。やっぱり“感受性”だ。
ちょっとしたことで落ち込んだり、でもちょっとしたことで喜んだり、それが人間だ。
生きているとやっぱり大変なこと、嫌なこと、めんどくさいこと、仕事とか仕事とか仕事とかね…。やっぱりそっちの比重のほうが大きいのかなって思う。
だから、「最近どうよ？」には言葉を詰まらせちゃうのではないだろうか。でも、辛いことの中にも楽しみを見いだせるのが人間の感受性なのだ。うん、ほんと忙しい生き物だ。はは。
もうAメロBメロだけでも名詩すぎて額縁に入れて飾りたい気分だ。なんだか詩人・茨木のり子さんの『自分の感受性くらい』を思い出した。
1番サビ
上手くやれるほど強くない
逃げてしまうほど弱くない
ちょっとした痛み 心に逐一積もるけど
他の誰でもない 君の人生は
君だけが生き抜ける
もうほんとそーだよなーって感じだ。特別な存在ではない多くの人たち、言うなれば“普通”の人たちがこの強さと弱さの間で揺らぎながら日々戦っているのだ。この“普通”を伝えるための言葉として本当に完璧で素敵な言葉だなと思う。
あと「逐一」という単語がすごいハロプロ感、つまりつんく♂感があって好きだ。なかなかJ-POPの中で「逐一」って歌詞見当たらなくないだろうか？
この曲の中でも“痛みが逐一積もる”ってなんかコミカルな感じがしてスマートじゃない。でもこの違和感、コミカル感がつんく♂詩っぽくて、津野さん狙ってるんじゃないかな～と思ってしまう。
イントロに登場した“ドレミファソラシド”のメロディに乗せて「他の誰でもない」と歌われるサビ後半、この曲のキーメッセージはこのラスト3行だ。
画像出典：ユニカビジョンでBuono!特集。野外ライブ上映イベント＆生中継配信も
鈴木愛理の歌唱が光る後半パート
2番に入る前には、ギターの神様・エリック・クラプトンが在籍したことで有名なロックバンド・Creamの名曲『Sunshine of Your Love』のオマージュっぽいギターフレーズでロック好きをにニヤリとさせる。
2番の注目点は、なんといっても「すこしぃぃぃい元気がな・い・ような～」と1番のメロとは異なる難しいメロをラクラク歌いこなす鈴木愛理の歌唱だ。
私も参戦していたが、4年ぶりの復活ライブとして武道館で開催された『Buono! Festa 2016』でライブ初披露された時には、この部分の時に周りから「おぉ～」と声が上がっていたのを覚えている。
2番サビ
どうにかできるほど賢くない
傷つかないほど馬鹿じゃない
これまたもう絶妙な歌詞だ。
私は「傷つかないほど馬鹿じゃない」がこの曲のフレーズで1番好きだ。なにか理想があったり、目標とすることがあったり、色々なことを考えているからこそ人間は傷つく。
「器用に物事をこなしていけるほど賢くはないけど、何も考えていないようなおバカちゃんじゃないのよ！」って感じ、とてもパワーを感じるし、めちゃくちゃ“人間”だ。
からの、ドチャクソかわいい怒涛の「ねえねえ」11連打。
段々と楽器を増やし音を重ねていくことで高揚感を高めるアレンジとも相まって、聴き手のボルテージを上げた後に一気に音を抜くことで惹きつけ歌われる落ちサビ。嗣永桃子の澄んだ声で歌われる「明日はもっと優しくなれる」がまっすぐ心に響く。
そしてラスト。もはやここを聴くためにこの曲を聴いているといっても過言ではない（過言）、鈴木愛理の地声によるハイトーン「忘れないで」で大団円。
最後の最後の「ソラシド！」の可愛さでしっかりアイドル感も出すという抜け目のなさ…。なんて完璧なアレンジなんだ…。
“普通”の人の“普通”の人生を、でも“君だけの人生”を肯定してくれる、そんな応援歌だ。
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