10月7日の予感
ゴリゴリにいい曲ができてしまっている…
早くエビ中が歌ってるの聴きてえ…— 雫 (@HZshizuku) 2019年10月7日
2019年10月7日、ゴリゴリに嬉しくて、ゴリゴリにわくわくするツイートが全世界へ向けて放たれた。
ゴリゴリのいい曲を聴くことができそうだぞという予感は、約2ヶ月後の2019年12月18日に見事的中することとなる。
気鋭の若手を起用
「紅一点」
なんと美しい言葉だろう。
古くは、レベッカ。そしてJUDY AND MARYへと受け継がれていく「女性ボーカルバンド」の系譜は、2000年代に入っても、HIGH and MIGHTY COLORや陰陽座、(バンドの括りか分からないが)日本音楽界のど真ん中で活躍するいきものがかりへと続いている。
むさ苦しい野郎どもを従えて、観客の視線を最前線で受け止めるその凛とした姿は、高貴さまで感じると同時に最高にかっこいい。男女のコントラストによる画としての美しさ、強さも女性ボーカルバンドならではの魅力だ。
そして、時代は令和へ。現代の女性ボーカルバンドの急先鋒と言えば、2015年結成のポルカドットスティングレイだろう。
もうポルカッティングスティングレイに改名しては?って感じのこれでもかというカッティングギターと、時に少女のように甘く、時にナイフのように鋭い、曲に合わせて色を変えるボーカルが特徴的なロックバンドだ。
2019年7月には初の日本武道館公演を満員で成功に収め、いまノリにノッている彼女たち。そんな存在が楽曲提供をしてくれたのが、本楽曲『SHAKE! SHAKE!』だ。
小林さんと異なる解釈
まさに”ポルカ印”といった楽曲だ。カッティングギターとソリッドなラップが心地よく、バッキバキの演奏に乗せた伸びやかなサビは一際キャッチーに響く。
それもそのはず、アレンジだけではなく演奏までポルカドットスティングレイが行っているのだ。ありがとうございます。
私、このまま
何も知らないまま歩いていく
スキップしてさようなら
声を出してよ
1曲目の『ちがうよ』は、これまでのエビ中のアルバムとは異なる始まりでファミリーを驚かせ、ラストパートにはラップまで飛び出し、曲調・歌詞も相まって聴き手をフワフワとさせたまま終了する。
そんな状態で気持ちの整理がつかない中、小林歌穂さんの優しさと強さを兼ね備えた歌声が響く。
スパッと2曲目に心を向けさせる“サビ始まり”という手法が、本楽曲の清涼感のある空気に合っていて、逆に『ちがうの』の不思議な雰囲気も際立たせている。
こんな風に楽しめるのは、曲順・曲間までこだわりが詰まっている“アルバム”というフォーマットならではだ。
本楽曲でフィーチャーされている小林歌穂さんには、上記の歌詞が特に響いたようだ。
小林歌穂:とくに強く刺さったのが、ポルカドットスティングレイさんが提供してくださった「SHAKE! SHAKE!」です。19歳というわたしの年齢の場合、大人と子供の狭間という感覚が強くて、それぞれの意識を持たなきゃいけないことも日々多く感じてしまうんですね。
でも、「わたしこのまま何も知らないで歩いてく スキップしてさよなら」という歌詞を歌ったとき、「そんな深く考え込まず、自分の好きなように生きればいいんだ」とわたしは心の背中を押されたし、前向きな気持ちにもなれました。
だからこの歌を歌って以降、「大人だ子供だとかぜんぜん気にせず、自分が思ったままでいいんだ」と思えるようになりました。
出典:【インタビュー】私立恵比寿中学、今のメンバーの姿を投影したアルバム「playlist」
彼女は<だからこの歌を歌って以降、「大人だ子供だとかぜんぜん気にせず、自分が思ったままでいいんだ」と思えるようになりました。>と語る。
まもなく成人を迎える(マジか)自分を客観視した時の不安な気持ち、20歳という節目を前にして誰しもが感じたことがあるであろうあの気持ちを彼女も感じていたのだ。そんな時にサビのフレーズと出会って、「自分は自分だ」という前向きな気持ちになれたのだ。
画像出典:私立恵比寿中学「playlist」インタビュー|いろいろあった10周年、集大成のその先へ – 音楽ナタリー 特集・インタビュー
<「大人だ子供だとかぜんぜん気にせず、自分が思ったままでいいんだ」と思えるようになりました。>と本楽曲を解釈しているが、実は私の解釈(妄想)は少し異なる。
あくまでも解釈は人それぞれなので、小林さんの解釈を否定している訳ではないことを先に記しておきたい。それぞれの解釈を語り合うのが、音楽の楽しみ方なのだから。
私は、本楽曲はあくまでも「子供」の歌だと思う。もっと言えば、「子供」から「大人」へのメッセージソングなのだと思う。
真のメッセージ
青二才 でもこの際
火遊びしてみる? By my side
純情・友情・バカ参上(ハァーイ!!)
まだ知らない天井
小林さんが感じた通り、本楽曲に「自分らしくあれ」というメッセージが込められているのは間違いないと思う。しかし、枕詞に「子供でも大人でも関係なく」が付随するのかどうか、という点が私の解釈との差異だ。
本楽曲のラップ部分では、一貫して「子供の視点」で描かれているように感じる。思春期特有の無敵感というか、JK的に言うならば「ウチらまぢ最強www」感というかそんな感じだ。
<いけるっしょ!>や<エモめ>といった口語的な若者ワードを随所に使用することで、その雰囲気をうまく作り出している。そんな<青二才>を自負する若者が<膝上20cm>という武装をまとい、友達とともにどんな状況でもポジティブさを忘れず、二度とない青春時代を闊歩していく。
そこに恐れはない。だって“まだ”天井を知らないから。
若い可愛い女の子のハリ、ツヤ、無敵感、みたいな、自分が歌ってもあまり説得力のない題材にチャレンジできて超嬉しかったです
仮歌もノリノリで歌って、エビ中のみんなが歌ったやつが戻ってきてまた嬉し〜〜〜ってなった
こういうことがずっとやりてえ〜!エビ中チームありがとう #エビ中playlist— 雫 (@HZshizuku) 2019年12月18日
もちろん、私立恵比寿中学というグループにもリンクさせた歌詞になっている。
というか、“現在の私立恵比寿中学のテーマソング”として聴くのが正解だろう。ファンに向けて「これからも突っ走っていくから応援してね」と投げかけているのだ。
そして<声を出してよ>と歌う本楽曲は、私立恵比寿中学の主戦場であるライブを意識した歌詞にもなっている。
大声でコールを入れて、歌って、踊って、誰もが中学生に戻って大騒ぎをするのがエビ中の学芸会の醍醐味だ。作者も下記のように語っている通り、意図的にファンが参加できるような構成で楽曲が作られている。
その他、コールアンドレスポンスや合いの手パート多めです。かなりライブを意識した曲になってます
メンバーとファミリーみんなで作る感じの曲になってたら嬉しいね
我もライブ観に行きたいな〜!— 雫 (@HZshizuku) 2019年12月18日
しかし私は、「声」を求めているのはファンに向けてだけではないと妄想する。
これは「全ての声を失った大人」への投げかけなのだ。
そうやって HEY!(HEY!)
黙ってないでさ
声を出してよ 今 SHAKE!SHAKE!
大人になると、自己を押し通すのが難しい場面が必ず現れる。そんな時に、大人は声を押し殺す。黙る。迎合する。
人生のどこかで“自分の天井”を知ってしまっているそんな大人の姿は、“まだ”天井を知らない子供の目にどう映るのだろうか。
我々は、どんな醜悪な姿を晒してしまっているのだろうか。様々なしがらみに捕らわれて、<スキップして さようなら>ができない大人たちを見て、いつか天井を知ってしまう自分を想像したりするのだろうか。
そして、少し未来を怖いものに感じてしまったりするのだろうか。そんな大人にいずれ自分もなってしまうのだと悲観するのだろうか。
いや、若さをなめんな!
おいオッサン、オバサン!
なにビビってんだ!
声を上げやがれ!!
自分の意思を貫け!!
昔のてめえに笑われんぞ!!
分かったやつは返事しろぉぉぉおお!!!
そうだ。
本楽曲は、若者が大人たちへ喝を入れる楽曲なのだ。
なので小林さんの「自分らしくあれ」解釈は、広い意味では私と同意見だ。しかし「子供でも大人でも関係なく」ではなく、「子供から大人」への「自分らしくあれ」というメッセージだと私は考える。
私が大人という立場だから、本楽曲からそんなイメージを感じてしまったんだと思う。私がピッチピチの高校生だったらこんなことは考えなかっただろう。
類似した楽曲に欅坂46の『サイレントマジョリティー』がある。こちらの楽曲のテーマは「大人に強制される若者の反抗」だが、『SHAKE! SHAKE!』のテーマは「迎合する大人への若者からのメッセージ」といったところだろうか。
<Yesでいいのか>という問いかけは本楽曲にも当てはまる。狭義には異なるメッセージを発している楽曲だが、広義には同様のメッセージを発していると言えるだろう。
大人たちよ!批判を恐れず、自分を貫こうではないか!
おまけ
ということで、批判を恐れず一言。
真山が歌ってるせいで<でも少しChilly>が<でも少しチビ>に聞こえるよねwwwwww
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