いい時代になったものだ
サブスクの登場で本当に音楽を聴くハードルが下がった。
数十年前の伝説の名盤も、YouTubeで偶然見つけた名も知らないあのバンドのアルバムも、突如発表された海外アーティストの新曲も、指先一つで1分後には自分のものにすることができる。
CDが売れなくなり、アーティストにとっては良い面だけではないのも事実だが、リスナーにとってこれほど快適な音楽生活を送れるなんて10年前には想像もしていなかった。
そんな便利な時代の恩恵の一つが、まだ世間にそこまで知られていないアーティスト達の音源を様々あさることが出来ることだ。
ここではそんな音楽ライフの中でビビッと来た、ネクストブレイク必至の素晴らしいアーティスト達を紹介する。
FAITH「Party All Night」
スターの器だと思った。
メンバー全員が20歳という驚きの若さで、カーリー・レイ・ジェプセンやテイラー・スウィフトといったアメリカンポップスを下敷きにした瑞々しいロックサウンドを奏でているのがFAITHだ。
こんなんひとたびJK達の耳に入ったら、一瞬で若者のカリスマにのし上がるでしょ。おしゃれな雰囲気にスタイリッシュな出で立ち、ルックスも申し分ない。
そして何よりメロディが良い。
“美しいメロディ”と“歌いたくなるメロディ”は同じなようでまったく異なるものだが、FAITHの場合はその両方を兼ね備えている。
カラオケで歌える、踊れる。これは若者にヒットするには必須の条件だ。FAITHの楽曲には、そんな青春を彩るために必要な条件が全て含まれていると感じる。もっと若い時に出会いたかったよ…。はは。
英詞で歌われているので日本語詞以外を聞かない人にはとっつきにくいかもしれないが、MVでは訳詞を入れてくれている。このあたりの、サービス精神もファンを掴んでいける強さにつながると思う。
YouTubeのコメント欄を見ているとラジオから飛んできた方が多いようだ。メロディの良さ、キャッチーさを裏付ける何よりの証拠だろう。
DinoJr.「Safari」
星野源が日本国民全員を踊らせにかかり、ジワジワとブラックミュージック/ダンスミュージックの遺伝子がイエローモンキー達に侵食し始めている今日このごろ。
そんな土台が出来上がりつつある中で、Suchmosが『STAY TUNE』でスマッシュヒットを飛ばし、Nulbarichはさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブを成功させた。
この勢いに続くのが、シンガーソングライターのDinoJr.(ディノジュニア)になるのではないかと思っている。
多重コーラス、ハンドクラップ、一筋縄ではいかないギターにベース。カオスと秩序同時に存在する中で、ただ一つ“踊れる”という真実だけが身体を揺らさせる。この冒頭のトラックだけで、彼が只者ではないことが一瞬で理解できるだろう。
エロさとクールさを併せ持つ声質。巧みに韻を踏み、フロウとメロディの中間を行くような歌いまわし。
ホームランでバカさわぎする
スポーツバーの人だかりをわけ
きみが抜け出す姿見えた
そしてそこに情景描写を盛り込み、ただ音が気持ちいいだけで終わらないリリックの上手さ。
都会の夜の喧騒を「ナイトサファリ」と表現し、そのワンワードで終わらずに<エリマキトカゲの目を盗み おどりおどれアルマジロステップ>と他のリリックにもその要素を取り入れている。
文字だけで見るとメロディをつけるのが難しそうな単語だが、華麗に取り込む歌唱テクニックにより逆にカッコよく聴かせる凄み。
DinoJr.、ブラックミュージックファンは要チェックや。
ボルシチ「マンチェスター」
下北沢を中心に活動する4人組ロックバンド・ボルシチ。
ロシア料理名がバンド名(なぜ)になっているが、本楽曲のタイトルはイギリスの地名『マンチェスター』。
ロック界においてマンチェスターは、90年代UKインディーロックの中心的都市としてあまりにも有名だ。その名の通り、そんな90~00年代インディーロックの香りがプンプンプンプンする楽曲になっている。
クリーントーンのチャカチャカサウンドに気怠げなボーカル、シンプルな楽曲構成。しかしメロディは印象的だ。決して派手なメロディではないのに、ふと気づいたら口ずさんでしまう。いやーなぜだろう。メロディって不思議だ。
そういえばUKインディーにハマった時もこんな感覚だったな~、なんて懐かしさも感じてしまった。
人生を劇的に変えるような爆発力のある楽曲ではないのかもしれない。でも人生を共にできる楽曲ってこんな曲なのかもなんて思う。
メレ「海の本屋さん」
すごいアホみたいなこと言うけど、最初の感想が「あぁ、ギターっていい音だな」だった。
ここではないどこかへ意識を飛ばされてしまうようなドリーミーで繊細なアルペジオ。ギャンギャン歪んだ音色だけがギターの魅力ではないことを、改めて教えてくれたアルペジオだった。そこに別のメロディで絡むベースが、その魅力を果てしなく増幅していく。
自分の中の何かが浄化されていくのを感じるようだ。
リーガルリリーを脱退したベースの白石はるかが、中村伊織を誘い結成したのがメレだ。「愛を与えるバンド」を自称し、活動している。私は、この二人の組み合わせに人と人が一緒にモノを作ることの無限の可能性を感じてしまった。
だって、奥田民生を崇拝する人間と石崎ひゅーいを崇拝する人間が合わさると、こんな音楽ができるんだぜ。想像できないでしょ。
ギターとベースが色鮮やかに楽曲を牽引する音像は、あえて例えるのであれば初期L’Arc~en~Cielだろうか。彼らと同様、歌詞世界も相まって非常に“絵画的な音”を鳴らすバンドだと思う。
音楽を、視覚で楽しむ絵画に例えるのは何だか変な感じがするかもしれないが、言いたいことは分かるのではないだろうか。
“映像的”と表現されるような音楽もあるが、彼女たちは“絵画的”という表現がしっくりくる。
吐息の成分を多く含んだ独特な歌唱法も世界観を引き立てるオリジナリティだ。
ryu matsuyama「Words」
ryu matsuyamaというアーティスト名から、当然ソロアーティストかと思うだろうが実はバンドである。
ピアノスリーピースバンドであり、20歳までイタリアで育ったという異色の経歴を持つボーカルの名前がryuという。つまりマリリン・マンソン/ボン・ジョヴィ理論だ。
まずJames BlakeやBon Iverを彷彿とさせる音像を日本語で歌っているところに耳を惹かれた。どんなナイーヴな細身の優男が歌っているのかと思ったら、ゴリゴリの髭野郎が歌っていてさらに惹かれた。ははは。
こういった音像の中でメロディに日本語を乗せて、説得力のある楽曲を作るのは難しい。1音に内包する情報量の多い英語という言語であれば、幻想的で抽象的な表現でもメロディに乗せやすいが日本語はそうはいかない。
しかし本楽曲では、幻想的な音像に飲み込まれることなく、その世界観に同調しながらもしっかりと“言葉”が伝わる歌になっている。それは歌われている歌詞が美しい表現で装飾されながらも、シンプルな言葉で綴られているからだろう。
この文字を君に
この文字は僕だ
この壮大なサウンドスケープはきっとライブでこそ真価が発揮されるのだろう。
観たい。超観たい。
終わりに
もともとアイドルソングだけについて書こうと思っていた本ブログだが、我慢できなくなった。
だって素晴らしいアーティストは、そこら中でたくさん活動しているのだから。そりゃ語りたいよ、紹介したいよ。
本記事の5アーティストはどれも音楽ジャンルとしては異なるが、みんな違ってみんな良い。
今後も色々と自己満100%で紹介していくつもりだ。もちろん、アイドルも。
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