日本人の琴線に触れるメロディ
メリー、椿屋四重奏、ムック、THE BACK HORN、シド、9mm parabellum bullet…。
上記バンド名を羅列するだけで、バンド好きの頭の中にはあの色気、感傷、陰鬱、そして哀愁が交差する数多のメロディが流れてくることでしょう。
「昭和歌謡」×「ロック」
「ロック」の部分は各バンドで大きく音像は異なりますが、概ねそんな単語で括られるマイナー調で重厚な日本独自の哀愁のあるメロディを、感情爆発ギターロックに適度なアングラ感を加えて鳴らす彼らのようなバンドは、2000年代前半に人気を博し、現在でも高い人気を誇ります。
そんな彼らに多大な影響を与えたのが、昭和歌謡にグラムロックを乗っけた男が惚れる伊達男集団『THE YELLOW MONKEY』で、ムックのヴォーカル・逹瑯は彼らの楽曲「TVのシンガー」をカバーしていて、それでそれで…………。
という話は置いといて。
本ブログはアイドルブログ。アイドルの話に移りましょう。
「昭和歌謡」×「アイドル」
「昭和歌謡」の主役は言わずもがな、山口百恵や中森明菜、沢田研二や西城秀樹に代表される「アイドル」という存在なので、当然、平成…もとい令和においても両者の相性は抜群です。
何を隠そう、アイドル戦国時代を巻き起こしたAKB48は、結成当時バッチリこの路線に乗っていました。
一方でAKB48には、前出のバンド達にあったような“陰鬱としたアングラ感”とでも呼ぶような暗さはありません。
なぜなら、当たり前ですが彼女達はアイドルだからです。
1に笑顔、2に笑顔、3、4に文春、5に笑顔がモットーのアイドルですから、陰鬱な雰囲気なんてご法度なのです。
しかしアイドル戦国時代に突入し、多種多様がアイドルが生まれていく中で、“明るく楽しく美しい”というアイドルのステレオタイプは崩れ去り、音楽性はもちろん、ビジュアルからコンセプト、マーケティング手法に至るまで、その全体像はもはや誰一人として追い切れている者は存在しないでしょう。
つまり、「何でもアリ」となったアイドル業界。
そんな状況下で産み落とされたのが、昭和歌謡の哀愁と陰鬱としたアングラ感にロックとジャズをひと絞りした奇妙なダンス&パフォーマンスユニット『新しい学校のリーダーズ』です。
『新しい学校のリーダーズ』とは
画像出典:“はみ出し”続ける、新しい学校のリーダーズ。──すべてに全力で挑む、楽しむ。だからこそ、彼女たちは面白い!
プロフィール
踊る、セーラー服と奇行癖。と称され む、む、む。と、ざわつきながらも、つまらない現代社会を強く・楽しく生きるべく、個性を発揮し、許される自由を見つけることで社会に怒られないレベルでアンチテーゼを投げかけ、【はみ出していく】小さな小さなレジスタンス。
4人組ダンスパフォーマンスユニット「新しい学校のリーダーズ」でーす。
出典:新しい学校のリーダーズ OFFICIAL WEBSITE
実に香ばしいサブカル臭プンプンのプロフィールですが、結局どんなグループなのかというと「踊る、セーラー服と奇行癖。」と書かれている通り、セーラー服で踊る変な集団であるということです。
4人組ダンスパフォーマンスユニットと称されているので厳密には「アイドル」ではないのかもしれませんが、TIF出てるし、まぁアイドルでいいっしょ。ね。
基本的には、メガネがトレードマークのSUZUKAのワンボーカルで他の3名がダンスを担当するEXILE方式でのパフォーマンスです。アルバム曲には各メンバーのソロ曲があったりするので、あくまでも基本ですので悪しからず。
EXILE方式ということで、肝心のダンスのレベルはどうなんじゃいというと、メンバー全員がダンス歴10年以上という本格派。そしてなんと振り付けもメンバー自身で考えています。
これは、他のアイドル達と大きく異なる特徴と言えるでしょう。
肝心のサウンド面についてですが、プロデュースを行っているのは、かつて『東京事変』でもキーボードを務めたH ZETT M氏。昭和歌謡にジャズのエッセンスを加えてバンドサウンドと融合させ、独自の音楽を築いています。
昭和の模倣で終わらない楽曲達
正直、世間的な知名度はまだ全然ありません。
しかし彼女達は、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」や「COUNTDOWN JAPAN」といった大型フェスへ出演を果たしています。その理由は、一重にその楽曲とパフォーマンスが評価されているからにほかならないと思います。
ということで、早速楽曲紹介と参りましょう。
恋ゲバ
「女生徒」「先生」「安吾」「芥川」「黄昏れ」「哲学」など、根暗文系ボーイ&ガールが鼻水垂らして喜ぶようなワードを哀愁の昭和歌謡メロディに乗せて歌う1曲。
サウンドはジャジーかつノイジーで本格志向ですが、中森明菜「DESIRE」をオマージュしたかのような「ゲバ」の連呼など、遊び心もある楽曲になっています。
可愛さなんて1mmも意識していない狂ったようなダンス(褒め言葉)が曲の世界観を引き立てていますね。バスドラに合わせて腹パンをするという恐らく前代未聞の振り付けがお気に入りです。
もちろん、ただ奇をてらっている訳ではなくしっかりと考え抜かれた振り付けになっています。
SUZUKA たとえば「若気ガイタル」のリード曲になっている「恋ゲバ」の振り付けで、私がKANONさんを殴るシーンがあるんです。ドラムの「ドッ、ドッ」っていう音に合わせて「ボーン、ボーン」って。
先生に恋してしまう女子生徒の気持ちを歌った曲なので、先生が自分の友達と楽しそうにしゃべっているのに対する嫉妬心から八つ当たりするっていう表現で、先生に恋する狂気的な女子生徒の深い闇を表しました。
KANON 恋ゲバの全体的な振り付けは、メンバーの左前に先生がいるという設定で、SUZUKAが先生を求めて、私たち3人が全力で止めるっていう感じの動きがたくさん入っています。
SUZUKA 止める3人が社会や法律を体現しているんです。
RIN 先生と生徒の恋は禁断っていう意味の壁だったり。
MIZYU 「恋ゲバ」の「ゲバ」が、暴力にまかせてどうにかしようとするっていう意味があるんで、それも表しています。
新しい学校のリーダーズが体現する革命 「やりたいこと、自由にやったっていい」 個性的すぎるダンスと楽曲で閉塞社会に一石|文化・芸能|PICKUPニュース|徳島新聞
う~ん、すぎょい。
迷えば尊し
メロとかドラムのドタバタ具合とかもう「俺達のメリー(カタカナ表記)が帰ってきた!」って感じしちゃいますが、アイドルソングです。
バンドで合わせたらめちゃめちゃ気持ちよさそうなキメフレーズ連発のバンドアンサンブルに、これまた昭和歌謡メロディが乗っている相変わらずの怪曲。
諸々の奇妙さに意識が行きがちですが、実は歌詞が素晴らしいのです。
本当の自分ってなんだろな?
大人だったら どうだろうね?
気分で探したいからほっといて
もうパンクじゃん。
学校行けやあ゛
作詞作曲は『あいみょん』です。
そんなんいいに決まってんだから聴こうよ。ね。
毒花
V系ファンはとりあえず、聴いてみようよ。多分好きだから。
「花」繋がりだからなのか、BUCK-TICK『惡の華』をオマージュしたようなイントロが聴けるよ。
素顔の彼女達
曲だけ聴いてるとどうもヤバそうな子達ですが、とはいえ箸が転ぶだけでおかしい10代の女の子。
新しい学校のリーダーズのYouTubeチャンネルでは、ギャップ萌え必至の彼女達の素顔が垣間見れますよ。
「パンクアイドル」として
パンク精神を持ち、昭和歌謡という古典を引用しながらも攻めた楽曲を展開する新しい学校のリーダーズ。
有象無象が蔓延るアイドル業界においても、なかなかに異色なグループではないでしょうか。
個人的には、今や飛ぶ鳥を落とす勢いであるBiSHの対抗馬になりえる存在だと思っているんですよね。
「楽器を持たないパンクバンド」を自称するBiSH。対して、「【はみ出していく】小さな小さなレジスタンス」を標榜する彼女達のマインドには、どこか共通点があるように思えます。
楽曲だけでなく売り出し方もアヴァンギャルドであったBiSの血を引き継いでいたBiSHが、これまでの楽曲にはない大衆性を持った名曲『オーケストラ』1曲によって、幅広い人気・知名度を獲得し、“カルト的な人気”から脱却したように、なにかキッカケがあればより大きな人気を獲得できるような可能性を、新しい学校のリーダーズは持っていると思います。
今からチェックしておいて損はないですよ。
きっと。